電子化のメリット

2013年06月12日

 医療業界はIT化が遅れていると言われております。究極の個人情報を取り扱うといったところがIT化を慎重にしてきたのかもしれません。大きな病院ともなれば働く医師の世代幅は50年ぐらいになります。PCをほとんど使えない先生もいれば、SNS世代の研修医もおり、同じシステムを使いこなさなければいけません。データの移行作業にも莫大な経済的、人的負担が伴います。また、エックス線写真のデジタル化以外に医療報酬上のインセンティブがないのも導入が進まない一つの原因なのかもしれません。

 当院は、私が引き継いだ時から迷わず電子化の選択をしました。そして電子化が完了して半年以上が経過しました。新規導入と違い、移行作業が必要であったため、それなりにトラブルや、労力が伴いました。しかし、診療録(カルテ)、レセプト、エックス線写真、エコー、血液検査結果がすべてが繋がり一元管理できるようになったメリットは大きいと思っています。さらに新クリニックでは、オンラインオーダー等にも対応する予定です。

 よく電子カルテ導入の弊害として、PCモニターばかり見ていて患者を見ないとの批判があります。しかし、電子化により、エックス線写真、検査結果を探したり、戻したりする無駄な時間も大幅に減り、むしろ患者さんの話を聞ける時間は増えたように思えます。PC入力も極力ブラインドタッチで行うことにより、紙カルテの時と比べ患者さんと目を合わす時間が減ったとは思いません。このことは最大のメリットかと思います。しかし、停電時や、端末の故障時にはすべての情報が出せなかったり、個人情報漏洩問題など、大きなリスクがはらんでいるのも事実です。メリット、デメリットのバランスをとりながら医療のIT化を推進する必要があると思います。そしてまた、このような電子化も所詮は“tool”に過ぎず、どんなIT化時代が到来しようとも、医療の主役は常に医療従事者と患者さんの人間関係“heart”でなければならないと思います。